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『大山倍達正伝』を読む

2010年7月19日

 書棚に眠ったままでいた『大山倍達正伝』(小島一志・塚本佳子著、新潮社、2006年)を手にとって読みだすと、結構おもしろく、600ページを超す大著ながら一気に読んでしまった。極真空手の創設者として知られる大山倍達氏の伝記といおうか、これまで虚偽宣伝されてきたことが何かを明らかにし、真相に迫っている。
 もっとも大きな虚偽は、東京生まれの日本人とされてきたもので、本当は韓国生まれの帰化日本人であることなどが明らかにされる。実際そのこと自体は本書で初めて明らかにされたことではないが、韓国に住む親類や家族にも直接取材を行っており、事実の重みに、読ませる部分が多い。
 何より目を開かされたのは、大山館長が若き日に空手を熱心に稽古した最大の動機が、当時、民団の前身組織の活動家であった同館長が、朝鮮総連系との抗争を繰り返すなかで、常に実戦を想定したことからだったというくだりである。
 ノンフィクションの「作品」としての評価は分かれるかもしれないが、人間・大山倍達の「真実」に迫ろうという静かな気迫が感じとれる。
 本書の価値は、あくまで「事実」に立脚して隠れたエピソードなどを可能な限り掘り起こしていることだろう。出自がどうであろうと、空手が強かったことに何ら変わりはないとのスタンスも好感がもてる。
 極真会館は1994年の創設者の没後、分裂を繰り返し、多くの流派・団体に分かれたことで知られる。

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カテゴリー:コラム
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