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「八ツ場ダム」を巡る反対派・賛成派の食い違い

2009年10月21日

 巨額ダムの象徴として工事中止の方向になっている群馬県の八ツ場(やんば)ダム。中止反対派がもともと日本共産党系の市民運動に発していることはすでに16日付の当コラムで指摘したとおりだ。同党系列の弁護士たちが6都県で工事指し止めを求める民事訴訟を一斉に訴え、一審レベルで現在3つの裁判で判決が出ているが、いずれも住民側が敗訴している。いまのところ工事が違法というところまではいかないということだ。これらのダム建設反対派の主張は、利根川の上流域に建設する八ツ場ダムはすでに利水・治水上の効果がないだけでなく、逆に地すべりなどを頻発させ、「必要性がないだけでなく、つくってはならないダム」(島津暉之氏)ということになる。
 この問題について、民主党代議士出身ながら強行に反対姿勢を貫いている埼玉県の上田清司知事について、反対派は東京のある市民集会で、同知事の「利権のため」などと簡単に斬り捨てていたが、上田知事の発言を見る限り、そんな短絡的なものではなさそうである。
 先日、同知事をはじめとする関係流域の6人の都県知事が現地を視察し、共同記者会見を開いた。上田知事はその席上、98年以降だけで、利根川流域で29か所もの「漏水」が確認されていることを指摘している。漏水とは、堤防の下を通って、沿岸に水がわき出る現象で、これはいずれ堤防が決壊しかねないことを警告するものだ。そんな危険地域の県民の生命を預かる立場の知事にとって、八ツ場ダムの治水上の効果は、頼るべきものに映るようだ。
 さらに地球温暖化に伴って最近増えているゲリラ豪雨の例もある。反対派は過去の洪水被害をサンプルに、「治水効果がない」などと主張しているが、これからどのような異常気象が起きるかは未知数だ。反対派はこのダムを造っても、治水上の効果は13センチのレベルにすぎないと主張しているが、上田知事はこの指摘を指して、「プールの水の13センチとは違います。広大な利根川の13センチです。少しでも水位が下がれば大きいんです。我々の試算では20センチですが」と指摘した。
 このように反対派が示しているデータと、上田知事らの示すデータは明らかにその様相が違う。上田知事は「デマゴーグを言って歩いている人もいる」と、反対派の人々に手厳しい。小生には、実際に県民の生命を預かる立場の首長と、ある党派の必要性で行っている運動の違いというふうにも受け取れるが、まだ結論は下せないでいる。
 はっきりいえることは、民主党はこうした市民運動の上に乗っかってマニフェストに八ツ場ダムの中止を記載し、それを金科玉条のごとく実行しているという現実だ。国民にはわかりやすいので、民主党の高支持率には貢献しているようだが、仮に将来、このダム建設中止がきっかけで、利根川流域で洪水が起き、国民の生命の安全が脅かされるような事態になるとしたら、中止を言明した前原国土交通大臣の責任は誠に大きいものがある。そのときは民主党だけでなく、前原大臣を「死刑にすべき」と訴える地元住民の声もあるほどなのだ。

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カテゴリー:コラム
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