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最後に取り残された日本  外国人地方参政権めぐり

2009年5月24日

 一橋大学や龍谷大学で教官をつとめた田中宏氏がこの3月で定年を迎え、今月、都内で記念の最終講義を行った。学問として物事を教えるだけでなく、外国人の権利問題のために奔走してきた学者として知られるが、いまやOECD加盟の30カ国のなかで、外国人地方参政権をまったく認めていないのは日本だけになってしまったという。さらにG8においても同様で、日本において外国籍住民がいかに「分断政策」を強いられているかが明らかだ。
 この問題が日本で現実味を帯びたのは約10年前。公明党などが最初に国会提出した98年の法案から数えて2~3年後のことで、衆院で国会審議はされたものの、結局、採決されることすらなく、いまも宙に浮いたままだ。200年程度の歴史しかもたない「国籍」をすべての理由に、それ以外の者を地方政治から排除する現状システムが、日本社会の将来にとってプラスになるとはとうてい思えない。
 反対派の言い分は決まって、「日本の地方自治が外国人に乗っ取られる」といった心情的なものだが、そこには“共生の視点”は最初から含まれていない。実際にこの制度ができても、そのような事態はけっして起きないだろう。
 前大統領が自殺して大騒ぎになっているお隣の韓国でも、すでに外国人地方参政権の制度を法制化し、実施している。韓国と日本では、在外投票制度(海外に住む自国民が自国の国政選挙などに大使館などを通じて参加すること)がすでに法制化されており、さらに韓国に住む外国人は地方参政権を認められている。欠けているのは、日本に住む外国人への地方参政権だけというわけである。
 韓国は日本の法制度を真似して経済発展してきた面が強いが、いまやこの種の政策ではすでに日本の先を行っているようだ。日本でこの10数年、“奴隷労働”などとして問題になってきた「研修・技能実習制度」(=外国人を研修ビザで受け入れ、月数万円の報酬で雇う制度。パスポートを取り上げて働かせるなど問題が多い)でも、韓国でも同様の制度を行っていたが、すでに「廃止」するという健全な政策判断を実施している。さらに外国人のための総合的な法制度も策定しているという。その意味では、日本はいまだに「鎖国」したままのような状態にさえ思えてくる。
 この問題で反対を続けているのは、理解力を持たない一部の右翼、ナショナリズム風潮にのって売上をのばしたい類の保守系雑誌、あるいは櫻井よしこといった論客たちだ。彼らはこのまま日本国籍者とそれ以外の者を国籍で「分断」し、地方政治に参加する道を閉ざしたままでいることが本当に日本の「国益」になると信じているのだろうか。
 「分断社会」を継続することによる各種の悪影響は、われわれの子や孫の世代に「負の遺産」を残すことになりかねない。世界でも“異例”に陥った日本の現状は、真剣に検討されるべき時期を迎えている。

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