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矢野絢也の素顔  41  “拝金主義”の権化

2009年5月9日

 矢野絢也による過去の原野商法詐欺疑惑が初めてメディアで取り上げられたのは2005年11月。「財界にっぽん」(12月)という雑誌に被害者の一人が手記を発表したのがきっかけだった。その後同誌は連続してキャンペーンを張り、公明党書記長だった矢野絢也が一族をあげて国民を騙した事実を具体的に暴露した。元政治家で政治評論を続けていた同人にとっては致命的な指摘にも思えた。
 考えてもみてほしい。元政党幹部が「詐欺師」だったと書かれているのである。それに対する矢野の態度は当初こそは「法的手段をとる」などといった威勢のいいものだったが、何年たってもその兆候はなく、最近では「相手にしない」(矢野側)という態度を鮮明にしている。何より、事件の内容が「真実」であるために、逆にやぶへびになることを恐れているとしか思えない。矢野側は虚偽事実の摘示に基づく名誉棄損で訴えることすらなく、それらの手記はすでに3年の時効を経過した。
 民主党の幹部議員たちがマルチ商法を擁護するための議員連盟をつくり、マルチ企業で講演したり、献金を受け取っていたことで非難を浴びている。だが、彼らのなかで自らマルチ商法で金儲けするためのダミー会社までつくり、実際に経営していた者はいない。「次の内閣」の経産相になる人物が、業務停止命令を受けたマルチ会社の役員に一時的に就任していた事実は存在するが、自ら中心的に経営していたわけでもない。
 ところが矢野絢也の場合は、73年に従兄弟や自分の妻、実母などの親族を役員にしたダミー会社「善興」を大阪市内に設立し、悪徳商法のはしりともいえる「原野商法詐欺」を実行、あるいは黙認していた。同年には北海道の原野を購入するための大規模な資金を要したはずだが、そのような大がかりな資金を用意できたのは、矢野本人以外にいなかったと見られている。
 公明党の書記長が悪徳商法を擁護するという次元ではなく、それを直接的に“後押し”し、国民に「被害」を与えていた。さらにダミー会社には自分の妻や母親まで関与させていたのだから、事は尋常でない。問題会社・善興の会社登記簿はすでに設立時のものは法務局でも廃棄されていて存在しないが、関係者の調査などで明らかになっていることだ。
 善興の詐欺商法による被害総額は、当時の金額で1億円を下らないと思われ、現在の貨幣価値でいえば10倍近くに匹敵すると推察される。こんな金儲けをするかたわら、矢野本人はとうてい歳費ではまかなえないはずの「豪邸」をキャッシュで購入していた。
 残念ながら、政治家・矢野絢也は、当時からどこまでも腐っていた。ただし、同人はそれを巧妙に「隠して」生き延びてきた。その“拝金主義体質”は、後年、党委員長時代に発覚した明電工事件で辞任を余儀なくされて決定的なものになる。原野商法詐欺と明電工事件は、土地と株という別種のものを媒介した事件ながら、根は同じであり、一本の線でつながっている。矢野の政治家人生を象徴するのは、どこまでいっても「金儲け」「拝金主義」であり、その点はいまもまったく変わっていない。
 同人は93年、衆議院議員を引退した。その前年の6月には、後任の委員長を務めていた石田幸四郎に「次は出ません」と自ら申し出る。詐欺商法で多くの国民を騙した株式会社「善興」が解散されたのは92年11月。矢野絢也の政治家引退とともに、その役割を終えたのだった。

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