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「直接証拠」と「間接証拠」

2008年9月18日

 1995年9月1日午後10時ごろ、東京・東村山市議がビルから転落した。まさにそのときの現場を目撃した者はだれもいない。謀殺説にせよ、自殺説にせよ、仮に現場を目撃していた人がいれば、それは「直接証拠」そのものだった。だが、不幸なことに、その現場を目撃していた人はいなかった。そこで次なる直接証拠は次のようなものになるだろう。

 ①現場で争った形跡はあるか。
 ②突き落とされた証拠はあるか。
 ③転落した女性は何と言っていたか。

  ①については、板一枚程度の厚さなのか、現場マンションの廊下での会話は、室内にもクリアに聞こえるほどの場所だった。だが、そのとき室内にいた住民は、だれも女性市議が言い争う声や音を聞いていない。もしもこのとき、言い争った声を聞いた人がいれば、それは他殺を裏づける「直接証拠」に近いものだったろうが、そうした事実はまったく存在しない。
 ②女性市議は、ビルの壁に沿って、真下に落下していた。そうではなく、ビルから2~3メートル以上離れて落ちていた場合は、「他殺」を疑う直接証拠に近かった。しかも、女性は足からまっすぐ下に落ちていた。第三者が女性市議をつかんで下に落としたとの説を唱える者がいるが、現実にはとうていありえない話だろう。
 ③転落した女性市議は、しばらく意識が残っていた。はっきりと声を発することもできた。「落ちたのですか」との問いかけに、女性は首を横に振った。痛くないですかと聞かれると、「だいじょうぶです」と答えた。救急車を呼びましょうかとの問いかけには、「いいです」と断っている。その間、「襲われた」とか、「突き落とされた」と主張したことは一切なかった。もし仮に、そう話していたら、「他殺」の有力根拠になったはずだが、実際はそうではなかった。
 以上から考えて、「他殺」の直接証拠は存在しないといってよい。かといって、遺書が残っているわけではないので、「自殺」の直接証拠があるわけでもない。ただし、「他殺」の可能性が薄い以上は、あとは「自殺」か「事故」しか残らない。ただし、「事故」といっても、理由もなく、ビルの5階に上ることもなかろう。警察が当初から、「事件性は薄い」と発表してきたのは、上記のような客観的証拠による。
 司法解剖の結果、両腕にアザがあったことをとらえて、謀殺説をいまだに主張する者たちもいるが、どこでついたアザかも不明である。落下するときについた可能性さえある。いずれにせよ、これは間接証拠にすぎず、直接証拠にはなりえない。例えば、ビルの廊下で住民が女性市議の争う声を聞いていた場合などなら、「他殺説」を“補強”する有力根拠になりえただろうが、その前提条件をそもそも欠いているわけだから、「他殺説」の根拠にはなりえないわけだ。
 結局、現場に残された数々の客観的な証拠によって、女性市議の「他殺」の可能性はゼロに近く、「自殺」の可能性が極めて高いということになる。ここで「自殺である」と断定した言い方をできないのは、単に目撃者がいないからであって、実際は「自殺」と断定してもいいような状況にすぎなかった。
 女性市議が自殺に至った心的要因として、①議席譲渡事件②万引き事件③万引き事件のアリバイ工作の発覚――などが指摘されてきた。②を除き、同僚市議「矢野穂積」が“密接”に関与している。

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